東京高等裁判所 昭和46年(う)2257号 判決
被告人 喜佐美光男
〔抄 録〕
所論は、原判決は法律上の減軽事由である従犯減軽と併合罪加重の順序をとりちがえていると主張する。
しかしながら、刑法七二条は、加減の順序をかえると処断刑の範囲が異る場合があるから、これを一定にして不公平を生じないように同条所定の順序に従うべきものとしたのである。したがつて、同条三号の「併合罪ノ加重」とは、同法四五条前段の併合罪につき同法四七条に従い加重すべき場合を意味し、単に同法四五条後段の併合罪であるというだけでは右四七条の適用はなく、処断刑の範囲に変動を及ぼさないのであるから、前記七二条三号にあたらない。
原判決は、被告人の本件所為が「刑法一八六条二項前段、六二条一項に該当するところ、前示確定裁判を経た罪があり、本件はこれと同法四五条後段の併合罪の関係にあるので、同法五〇条によりさらに本件について処断することとし、同法六三条、六八条三号により法律上の減軽をした刑期の範囲内で」被告人を懲役四月に処しているところ、右の本件が確定裁判を経た罪と刑法四五条後段の併合罪である旨の説示は、刑法五〇条により本件を処断すべき旨の判示を導き出す前提であるにすぎず、これを併合罪の加重と同視すべきものでないことは上述のとおりであるから、原判決が、これにつづいて従犯の減軽をしたことに加減の順序を定めた刑法七二条に違反する点は存しない。所論は処断刑の形成過程における加減順序の問題に宣告刑を混同させる議論であつて、採用できない。
(江碕 竜岡 桑田)